702講義室
2017-01-06 09:19:00
認識の前提条件
日常生活における人間の意識の在り様について
車を運転しているときの状態を例に考えてみます
走行中は主に、信号、他車、歩行者に注意は向けられ
運転操作は、ほとんど無意識の領域で行われています
景色が美しいとか、同乗者の様子など、運転以外の情報については
意図的に意識を向けない限り、認識しているようで認識していません
脳は、自分にとって興味があること、重要だと思うこと以外
脳幹にあるRAS(情報フィルター)システムによって
情報の取捨選択が行われ、認識することができません
扁桃核と海馬の連携で生命に危険が及ぶと判断した場合
視床下部よりアドレナリンが分泌され
無意識が危険に対する身体反応を始めるとともに
RASシステムを通過した情報は前頭葉に送られ
危険を前提に認識され、分析判断されることになります
つまり
認識の前提条件としてRASシステムありきなのです
不安なのは、不安な脳の状態で認識しているから不安であり
楽しいのは、楽しい脳が認識しているから楽しいともいえます
今、不安なのは、ドーパミンが出ていないからだ
今、楽しいのは、ドーパミンが出ているからだ
今、幸せなのは、セロトニンが出ているからだ
今、緊張しているのは、アドレナリンが出ているからだ
脳の状態を意識にあげることは
自分を支配することでもあります
2017-01-05 07:42:00
扁桃核の宇宙
我々は日常生活において、まず先に客観的状況があって
認識分析判断したうえで適切に行動することを心掛けます
現在どういう状況であり、今後どのように展開されるのか?
それにより快不快を覚えつつも、感情に左右されることなく
冷静に行動することを心掛けつつ生活していく努力をします
がしかし、この世は先に感情的現実世界ありきなのです
扁桃核の快不快状態によって目の前に展開する現実世界は
簡単に一変してしまいます
そもそも、人間にはすべての事実関係を知ることは不可能であり
可能な認識の上で状況を予測、判断することになるわけですが
扁桃核に脚色された状況を客観的な現実の起点とする限り
冷静かつ適切な判断、行動などは難しいということになります
どういうことかというと
物事の良しあしは、感情に左右されるところが大きく
その時その時の脳の状態に影響されることになります
「やる気が出る・やる気が出ない」とは
脳のドーパミンの分泌量の差でしかありません
どんなに困難で達成が難しい仕事であっても
ドーパミンが大量に分泌されている状態では
活動的ワクワク状態で取り組むことができる反面
普段、大好きでどんなに得意な仕事であったとしても
ドーパミン不足の状態では、どうにも意欲がわかず
取り組むことすらできず悲観的な展望しか持てません
簡単な仕事であるか?難しい仕事であるか?は
ドーパミンの分泌状態に左右されるところが大きいのです
人間とは実に単純な構造である事実に驚きます
現実世界とは、自分から離れた客観的状況があるわけではなく
扁桃核の快不快がまわりの世界の様相そのものを決めてしまう
これを意識するだけでも現実をコントロールできるのです
感情そのものに対する理性による努力よりも
先に扁桃核の状態を認識し、対処する方が
より抜本的な対応であるといえるわけです
2017-01-04 08:22:00
プライミング
お酒を飲んだ結果、ドーパミンが分泌されるのではなく
お酒を飲みたい、飲もう♪と思った段階で分泌されます
これをプライミングといいます
実は、幸せを感じるホルモンは
ドーパミンではなく、セロトニンです
扁桃核が快だと判断するとドーパミンが分泌され
活動的でパワフルなプラスの心理状態になります
ドーパミンは、運動ホルモンといわれ行動促進効果を持ちます
つまり、飲む前からすでに飲んだ状態になり
結果、飲まずにはいられなくなり飲むのです
何か目標を設定した場合、それを扁桃核が快だと判断すると
ウキウキワクワク状態になり、成功がすでに達成された状態
いわば、成功の喜びまでリアルに実感してしまうのです
よく成功哲学本に
「すでに成功したかのように過去形の言葉を使いなさい」
と書かれていますが、気持ちだけじゃダメなんです
物理的肉体としての体感でなければ効果は望めません
情報空間において現実を書き換えるには
すでに成功しているというリアリティを持った身体反応としての
体感にまで臨場感を高める必要が不可欠です
それには、扁桃核による快反応が極めて重要なのです
2017-01-03 08:50:00
幸せの脳内メカニズム
「神経伝達物質のドーパミンが分泌された後
最終的に抑制物質であるセロトニンが放出された状態」
のことを言います
この幸不幸にかかわる部位が扁桃核です
人間の脳は、進化の過程に沿って3層構造になっています
大脳新皮質(知的活動)
↑
大脳辺縁系(感情・本能)
↑
脳幹(生命維持)
扁桃核は、理屈脳である大脳新皮質にではなく
感情をつかさどる大脳辺縁系にある
直径15mm程度のアーモンド形の神経組織です
扁桃核は、記憶をつかさどる海馬と連携し
視床下部をコントロールすることによって
神経伝達物質やホルモンの分泌を促します
扁桃核は、本来危険から身を守るために
快不快を判断する機能をつかさどる部位で
この判断次第で脳の様相が一変する訳です
2017-01-02 08:33:00
薬物依存について
人間の幸不幸がドーパミン分泌状態によるものなら
薬物摂取の問題は避けて通れないテーマです
ほとんどの宗教では、飲酒に対し
禁止もしくは規制をしてきました
アルコールは、ドラッグの一種とされ
ドーパミン分泌促進作用があり
依存率はモルヒネと同程度です
(薬用モルヒネとは違います)
薬物によるドーパミン分泌は、自然に反するものです
「人間の生理には、基本的に分泌許容量が決まっており
人為的な分泌促進操作に対して、脳は自力での分泌を抑制します
これにより
常にドーパミン枯渇状態に陥ることとなり
薬物を求め続けるというスパイラルにはまる」
というのが薬物依存症のメカニズムです
薬物依存とはドーパミン依存そのものです
真偽のことは別としても、禅宗の祖である達磨大師は
足が腐るまで座禅を組み瞑想したとされています
瞑想によるドーパミン分泌量は
覚せい剤の20~30倍ともいわれ、依存状態を彷彿させます
ドーパミンは、直面する現実そのものを
あっさり塗り替えてしまうほどの威力を持つ
極めて有用であり重要かつ危険な物質です
それゆえに
有史以来、2500年以上も前から禁止されている薬物に対して
今だそのリスクを克服できないことから鑑みても
その危険度の大きさを常に念頭に入れておく必要があるかと思います